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里穂が指差した先には煉瓦でできたブロック塀。
ボロボロで、下は欠けて穴が開いていた。
淳
【いい天気だな】
里穂
【下だよあーちゃん!】
淳
【下?】
淳は目線を青空から煉瓦のブロック塀へと向けて
淳
【おいおい…勘弁してくれよ…】
情けない声を出した。
ブロック塀に空いた小さな隙間から黒猫が顔を出していた。
黒猫
【ミャー】
まだ子猫だ。
里穂
【可愛いね~】
淳
【お前、俺が猫苦手なの知っててなんで猫なんか】
里穂
【あの猫ちゃんね、いっつもお母さん猫とお姉ちゃん猫を追い掛けてくるんだけど、ここの塀のところで置いてきぼりにされちゃうの】
淳
【へぇ…。】
淳は無関心だった。
淳
【うちの塀を猫が散歩するなんて、よく知ってたな】
里穂
【よく追いかけるから】
里穂は嬉しそうに言ったが、淳は呆れていた。
淳
【子供かよ】
中学生は子供だと思う。
子供かよという台詞は淳の口癖のようなものだ。
里穂
【ほら、あーちゃん見てて!】
【あの黒猫ちゃん、今日はちゃんとトンネルくぐれるかな…。】
心配そうに子猫を見守る里穂を不思議そうに淳は見ていた。
淳
(トンネル…あの煉瓦の隙間のことか。)
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