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……一言くらい、説明してよ……
私は、瞬時に何が起きたか悟った。
確か、童話のアリスにも小さくなる飲み物や食べ物があった気がする。
カイが飲ませたのは、その小さくなる飲み物だったようだ。
不思議な事に、服はしっかり着ている様だし、もうどこに突っ込んだらいいのかわからない。
「おいアリス、ちょっと聞け」
カイは私に向かって言う。
一言文句を言いたかったが、聞いてくれない気もするし、そもそも聞こえるかどうかすらわからないので、やめた。
不満だが、大人しく頷いておく事にする。
「めちゃめちゃ不満な顔すんなよ。……えーとだな、こっから先、お前は何があっても絶対喋るな。で、大人しくここにいろ」
ここ、と指差したのは、カイのフードの中。
「なんで喋っちゃだめなの?」
「パンジー共が騒ぐからな」
「……はぁ?」
訳が分からず聞き返すが、カイに、乗れと言わんばかりに手を差し出されてしまった為、仕方無しに手の平へ飛び乗った。
不満な顔を崩さない私に、シェイルは苦笑を浮かべながら、
「行けばわかりますよ。……絶対に、口を開いてはいけませんよ?」
「わかった」
「アリス……お前、シェイルにはえらく素直だな」
カイの言葉はそっぽをむいてスルーした。
さっきから、人の話を聞かない方が悪いのだ。
カイは諦めた様に、一つため息をついた後、私をフード部分に放り込む。
痛みはないが、舌を噛みそうになったので、あとからしっぽか耳を思いっきり噛んでやろうと心に誓った。
「……いくぞ。アリス、喋るなよ」
最後にもう一度念押しして、カイが歩き出す。
フード部分だから、かなり揺れるかと思えばそうでもなく、ゆらゆら揺れる感じが心地よかった。
周りが見えなくなってしまったので、とりあえずは到着するまで何もすることがなくなってしまい、暇をもて余した私は……
つい、その心地よい揺れに身を任せ、目を閉じてしまった。
ゆるゆると、夢の中に引き込まれていくまでに、さして時間はかからなかった。
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