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「なんでもないの、ちょっと考え事してただけだから」
変わらず自分のペースで歩く、猫耳男改めカイについていきながら、私はシェイルに言った。
シェイルは優しく微笑みながら、
「この道は少し歩きにくいですからね。でも、もうすぐグリフォンを待たせている所に着きますから、もう少しだけ、頑張って下さいね」
「うん、わかった……って、グリフォン!?」
さらりと言い放ったシェイルに、私は思わず聞き返した。
シェイルは、はい、と兎耳をゆらしながら頷いて、
「グリフォンがいないと、この森までくるのには時間がかかってしまいますからね」
……そういうものなんだろうか。
と言うか、童話のアリスにもグリフォンは出てきたような気がする。
ますます、ここは不思議の国のアリスの世界なのでは、と思えてきた。
……どっきりなら、早く種明かしをしてほしい……と言っても、こんな小娘一人にここまで壮大などっきりなんて、仕掛ける訳がないと思うけど。
「……アリス」
「ひゃぁっ!」
またまたぼんやり歩いていたお陰で、カイを追い抜かそうとしていたらしい。
襟首を掴まれて、引き戻される私。
もう少し優しく出来ないのかと文句を言おうとするが、
「これ飲め」
何か言おうとする前に、カイが何か、得体の知れない瓶入りの液体を、瓶ごと私の口に突っ込んだ。
「――……っ!?」
慌てて吐き出そうとするが、鼻を摘ままれ、口まで塞がれているのでどうにもならない。
な、何これッ!?
必死になって飲み込むまいとカイの手を叩くが、飲むまで離さないような勢いだ。
やがて、呼吸が苦しくなる頃……
私は、謎の液体を飲み込む羽目になった。
ぅわあああああ飲んじゃった……!
「カイの馬鹿! 一体何飲ませ……た……?」
カイへ文句を言っている最中。
周りの景色が一瞬ブレて、くらりと立ちくらみの様な感覚。
瞬きをした後には、やたらとでかくなかったカイとシェイルが、こちらをしゃがんで見下ろしていた。
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