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この日も
学校帰り龍ちゃんの家に向かった。
「学校終わった?
そのままおいでよ」
そう連絡があったのだ。
この頃
喫茶店の深夜勤として働いていた彼は
明け方眠りにつき
夕方起きるという生活リズムだった。
私が部屋に入ると
起きたばかりなのか
ベットでタバコを吸っていた。
「お帰り~」
「ただいまっ」
タバコの火を消し
私を膝の上に乗せた。
見つめあい笑う…
その時だった…
彼の電話が鳴った…
「しぃ~なっ」
人差し指を口にあて
電話を取った…
意味が分からなかったが
私は、とりあえず黙った。
「もしもし、…うん…
今起きたぁ…うん…
ありがとな」
甘えた声の龍ちゃん…
電話口から
微かに漏れる女の声…
私は…すぐに気が付いた…
彼は他の誰かに
モーニングコールを頼んでいた事を…
「ん…またな」
電話を切った彼は
私の顔を見て
右唇を上げて笑った。
そして
言い訳する事もせず
「なぁ~怒るなよ~」
さっきの電話と同じように
甘えた声でそう言って
すねる私を
優しく抱きしめた…
何も聞けなかった…
何も言えなかった…
たくさんの疑問も
嫉妬も
私は
飲み込む事しかできなかった…
いつから
こうなってしまったのだろう…
私は…
たくさんの中の1人でしかないのだろか…
悔しい事に
それでも…
私は…
彼に…
アイタカッタ……
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