嘘と嘘

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夜中 彼からのベルが鳴ると こっそり部屋の子機から電話をかけた。 「もしもし?」 「ごめん、寝てた?」 「大丈夫だよ~」 どんなに遅い時間でも たとえ寝ていても ベルが鳴れば 私は すぐに起きた… いつ彼から連絡が来ても良いように ポケベルは いつも枕元に置いていた。 「今日お店暇でよ~」 「そうなんだぁ。 暇だと逆に疲れちゃうよね」 「だからよ~癒してくれる?」 「バーカ」 声をひそめて2人で笑う… こんなやり取りさえ 嬉しくて… 「多分、今日5時には仕事上がれると思うから 朝から家来る?」 「うん、行く~」 さらに嬉しい誘いに 私はすぐに返事をした。 「あっ…学校行ってからにするか?」 「もうすぐ就職休みに入るし、 休んでも大丈夫だよ」 「じゃあ、終わったら また連絡するな。 ちゃんと寝ておけよ~」 「分かったぁ。後でね」 電話を切り 顔がにやつく… しばらく眠れずに 窓辺に座り空を見上げる… 冬の空は 深い色をしていた… 星は見えなかったが 私の大好きな冬の空だった… 冷たい風に 身震いすると 再びベットに入り眠りについた… 右手には 連絡が来るだろう ポケベルを握りしめて… 朝がやってくる… 荒々しい目覚ましの音が 部屋中に鳴り響く。 時計の針は 8時を指していた。 急いで握りしめたままの ポケベルを見る… 彼からの連絡は …なかった… この日は 一度も彼から 連絡が来る事はなかった…
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