赤い痕

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家に着いて すぐにシャワーを浴びた。 胸元についた赤い痕を指でなぞる… 頭からお湯をかぶり 大きくため息をつく… 気を抜くと 今にも涙がこぼれそうだ… …あの時 マサヤと約束をしなければ… …もっと早く 龍ちゃんが連絡をくれたら… 色んな思いが 駆け巡る… でも…… 一番悪いのは 私だ… もしかしたら… 龍ちゃんから 「おめでとう」 の言葉が聞けたかもしれない… もしかしたら… 龍ちゃんの腕の中で 幸せに包まれたかもしれない… やるせなさが襲い 涙をこらえる… 『マサヤにも悪い事した…』 胸元をもう一度見る… この痕が消えるまで 龍ちゃんには会えない… マサヤと付き合えば 幸せになれるかもしれない… 「俺のモノ…」 そう言って笑った彼の顔を思い出す… 奥さんがいて… 子供がいて… 遊んでる 龍ちゃんなんかを待つより… 分かってる… 分かってる… それでも… 私は龍ちゃんが全てなのだ… 何故だか分からないけど 悔しいほど 龍ちゃんが一番だった… あの日以来 マサヤからは何度も連絡があった。 何度も… 何度も… ベルが鳴った… それでも 私が連絡する事は 二度となかった…
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