赤い痕

10/17

378人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
卒業式から 2日後の夜。 再び龍ちゃんから連絡があった。 予定もなかった私だが 電話をかけ直す事が出来なかった… 『…心配してくれるかな…』 こんな風に続けて 彼からの連絡を無視する事は 今まで一度もなかった。 たった一度も… 本当は 会いたくて 会いたく仕方なかった… 今すぐにでも電話をして 彼の声を聞いて… 彼の顔が見たかった… それでも… 『また…他の女の人に電話するんだろうな…』 期待する事を諦める術を覚えた私は ベルを止めると 机の上に置いた。 ただ… 卒業式の日 私を思い連絡をくれた事が 何より嬉しかった… 卒業を知っている彼は どんな気持ちでベルを鳴らしたのだろう… 『少しぐらいは ヤキモチ妬くかな…』 トレーナーの首元を引っ張り 薄く残る マサヤの痕を見つめる… 『…もう少し… 消えたら龍ちゃんに会える…』 会えないもどかしさは バカな事をした 自分への罰… そう考え もう一度ベルを手に取り 卒業式の夜の日付を表示した… それから さらに2日後… 胸元の痕が消えかけた夜だった… アヤの家に居た私に 龍ちゃんからのベルが鳴った…
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

378人が本棚に入れています
本棚に追加