赤い痕

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龍ちゃんの家に着いた頃 日は暮れ始め 肌を刺すような寒さに 私は無意識にコートを掴む… 薄暗い中 龍ちゃんの家のドアに手をかける… ガチャ… 鍵はかかっていなかった。 部屋の電気は消え 奥から静かにテレビの音だけが聞こえる… 『寝てるのかな…』 いつもなら 彼はまだ眠っている時間だった。 奥の部屋のベットに近づく… 毛布を抱き抱え 寝息をたてる龍ちゃん… 彼の寝顔に胸の奥がキュンとする。 『…やっぱり…大好き…だな…』 好き過ぎて 何だか切なくなる… カバンを降ろし コートを脱ぐとベットの下に腰掛けた。 いつまでも寝顔を見ていたいけど… 「龍ちゃん…」 優しく声を掛ける。 「…んっ…」 目を覚ました彼は 腕を伸ばして私を掴むと ベットの中に引き寄せた… 彼の温もり… 彼の匂い… 「…今来たのか?」 「うん。ごめんね、起こしちゃった?」 「バ~カ、何時でも良いから来いって言っただろ」 「でも…眠いでしょ?」 「お前と一緒に寝るからいいよ」 寝起きの顔で笑う彼が あまりに愛しくて… 龍ちゃんの胸元に顔を埋め 彼を抱き締める手に力を込める… 「お前卒業出来たか?」 顔を上げ龍ちゃんを見る。 「出来たよ~」 「お前でも卒業出来るなら、俺も今から行こうかな」 「も~ レイ超頑張ったんですけど~」 卒業の事に触れられ 一瞬ドキッとしたが 彼は それ以上何も聞いてこなかった…
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