であい

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『これ、売れますか?』 彼女はすでに顔馴染みの客だった。 毎日夕方の6時過ぎになると100円の古本のコーナーで 経済やら統計学やらの仰々しいタイトルが並ぶ本に刃向かうように立っていた。 というのも、彼女には到底合わない空間だったからだ。 いつも短いパニエにニーハイ。髪は地毛のような暗めの焦げ茶色をしていて、左サイドには赤メッシュが入っている。 ごついスタッズのついたエンジニアブーツは彼女によく似合っていた。 『これ、売れますか?』 初めてレジの俺に話しかけたのはまだ初夏を感じさせない肌寒い5月13日だった。
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