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『本日、美山町付近は季節外れの大雪となるでしょうーー』
画面の向こうにいるオジサンは、聞かなくても分かる事を丁寧に教えてくれている。
窓の外は真っ白だからな。最近はなぜか異常気象や震災がやたら多くて飽きがこなくて済む。
ここ、美山町はその名の通り美しい山で囲まれた町であり、とは言ってもそこそこ栄えていてどちらかといえば街だろう。
だが先程も言ったように最近、この辺りの環境がおかしいのだ。地震や噴火、季節外れの大雪に突然の台風・・・。山で囲まれた環境なため、天候が変わりやすいのは当たり前といえばそうだが、今は7月なんだ。な?雪はおかしいだろ?
「え?今日は雪なの!?」
少し遅れてリビングに同い年の妹がやってきた。そしてコイツ、陽香(はるか)の目は何故か輝いていたりする。コイツはいつまでたっても子供のままだから・・・仕方ないか。
「お兄ちゃん、あたしは子供じゃないから」
「んなこと言ってねぇよ」
「顔に出てた。『雪ではしゃぐなんて子供だ』って」
そりゃすまなかったな。
でもそうだろ、高校生にもなって雪で喜ぶなんて。
「あ、そんな風に思ってたんだ。冗談のつもりだったのに」
ニヤニヤしながか聞いてくる。コイツ、面白がってやがる。
「はぁ・・・」
とりあえずあからさまにため息をついてやるが陽香に気にしてない。いわゆる無視されたと言うヤツだ。仕方ない、話をそらそう
「ところで、冬用の服はどうすんだよ?」
半袖で吹雪の中を歩くのはいくらなんでも御免だ。しかしこの季節、長袖なんて押し入れの中で眠っているだろう。今から取り出すにしても時間がない。上着でもあればいいのだが・・・
「はい、お兄ちゃんこ~れっ!」
「は?うわっと!?」
顔面に向かって投げつけられた物を何とかキャッチ。この態度、どうにかならんのか。改めて手の中の物を見ると、
「携帯用カイロ?」
なぜコイツはこんな物を持ってるんだ・・・
「こんなこともあろうかと、いろいろと準備してるの」
えっへんと平坦な胸を反らしながら威張りながらの自慢話はもう聞き飽きた。
「こんなこと、ってオマエなぁ・・・」
いくら最近の環境が不安定だからって流石にこれは心配しすぎだろ。でも助かった。これだけでも何とか・・・
「なるかぁ!!」
「ちょっといきなり大声出さないでよ」
「半袖にカイロだけって無理があるだろ!」
「知らないわよ、そんなこと」
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