第2話

5/5
前へ
/44ページ
次へ
  でも、彼は一体何者なんだろう。 未だかつて私は、スーパーで片手に牛乳を持って、カロリーについて吟味している男の子を見たことがない。 彼は一体…。 「多分、“牛乳一番”ってやつが一番おいしいと思いますよ…。」 私はなにかしら返事をしようと、私が持ちうる牛乳に関しての唯一の知識を彼に伝えた。 「あ、そうなの。いいこと聞いちゃった。ありがとうね!」 「いえ、そんな…。」 彼はカゴに“牛乳一番”と書かれた牛乳パックを、5本程詰め込み、バイバイと言って去っていった。 牛乳、買いすぎ…。 私は彼の背中を見つめたまま、立ち尽くしていた。 あぁ、やだ。ドキドキしてる。 名前も、年齢も、学校も、なんにも知らない彼に、ドキドキしてる。 騙されるな、子夏。これは恋なんかじゃない。 これは…、妄想だ。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

897人が本棚に入れています
本棚に追加