田中幸雄①-家族-

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今日は五月十四日の月曜日。なぜか、この日ゎ道が混んでいた。 「社長どこまで寄り道してんねん。」 僕たちが現場に来て一時間半が経過していた。片岡さんはずっと金村さんに電話をかけていたが、一向に出なかった。 「ちょっと俺、見てくるわ。道もちょっとは空いてきたし。木下悪いけど車降りて待っといて。んじゃ幸雄頼むな。」 しびれを切らした片岡さんが一人で車に乗り、木下君が降りた。 「社長から電話あったり到着したら電話してな!」 そう言うと片岡さんが来た道を引き返し走っていった。 「ゆきにい…。金村さん事故とか遭ってないですよね?」 心配そうに木下君が車の外から運転席の僕をのぞき込む。 「大丈夫やろ?あの金村さんが事故とかへまするような人違うしな。」 そういった僕自身、心配でならなかった。僕や木下君、阿部君、片岡さん、吉川君。みんなが金村さんの粋を感じ、金村さんに育てられ、みんな金村さんが大好きだった。僕が現場に到着してから二十本目のラークの煙草に火を着けようとしたとき、僕の携帯が震えた。吉川君だった。 「もしもし。吉川君?」 「あっ先輩!生まれましたよ!!子供!かわいい女の子でした!」 「そっか!よかったやん!みんなに報告すんな!!」
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