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俺にとってどうでもいい事だ。
この男が泣こうが、喚こうが、死のうが。
扉が開く音が聞こえる。
その音がまるで死刑宣告かのように男は身体を窄め、激しいまでに震えている。
次第に近づく足音……そして顔見知りの男が入ってきた。
「で、どうするって?」
「ヤれだと」
ビクッと男の身体が跳ね上がる。
死刑確定─────
残念。
仕方ない。
運命だ。
さて、俺はタバコでも吸うか。
やっと見張りから開放された俺は胸ポケットから出したシワくちゃになったタバコの箱から折れ曲がった一本を取り出し、口に持っていく。
外に出る通路を歩くなか、後ろから悲鳴が聞こえる。いや、悲鳴ではなく断末魔かもしれない。
はあ、俺にとってはどうでもいい事だ。
早く外に出て火を付けたいんだ。
タバコの煙で人に迷惑かけちゃいけないからな。
マナーだよ。当然のマナー。
俺は扉に手をかけ、押し開けた─────
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