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あどけない表情で眠るおにいの頬をつついて、笑う。しあわせだなあ。おにいが大学に入学してからは時間が合わなくなって、一緒にいられる時間がかなり減った。仕方のないことだけど、やっぱり寂しい。だけど言えないから、と我慢していたのにおにいは僕の気持ちなんてお見通しだったみたいだ。
「明日はバイトが休みだからどこかに出掛けようか」
そう提案されたのは、お風呂を上がってすぐのこと。あまりに唐突だったからびっくりして何も言えずにいた僕の頭を撫でて、おにいは「ね?」とふにゃりと笑ったのだった。
「…だいすき!」
「うん、俺も大好きだよ」
ぎゅっと抱き着いて、視線を絡めて笑い合う。元から緩んでいた頬がさらに緩んでいくのを感じた。きっと今、すっごくだらしない顔してるんだろうなあ。しあわせだからいいけど。こういう時、僕とおにいその辺のカップルなんかより強い絆で結ばれているんじゃないかと思う。誰かさん達がうるさいから口に出しては言わないけど。
「あのね、新しく出来たお店に行ってみたいの!」
「うん」
「それからね、いつもの喫茶店にも行きたい!」
「そうだね」
おにいが頷いてくれるのをいいことに行きたかった場所をどんどん挙げていく。なんせ美味しいものに出会ったり雰囲気のいいお店を見つけたりする度に「今度おにいと一緒に来よう」なんて思ってしまうものだから、行きたい場所は山のようにある。本当におにいと一緒に行けるなんて、嬉しすぎる!
まあ一番嬉しいのは、おにいが大事な休日を僕のために使ってくれるってことなんだけど。
「ありがとう」
起きてる時はなんだか照れくさくてうまく言えないから、ぐっすり寝ている今しかこんなことは言えない。よほど疲れていたのか、明日のことを決めてからすぐにおにいは夢の世界へと旅立っていったのだ。なんだか、僕まで眠くなってきちゃったな…。ぴくりとも動かずに熟睡しているおにいにぎゅっと抱き着いて、自分も目を閉じる。うん、しあわせだ。
しあわせをもらいました
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