第1章

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「なんだ、これ…?」 俺は立ちすくんだ。瞳と美咲の悲鳴が聞こえた。飛び散った血が頬につく。翔太は腰を抜かし、尻餅をついている。 もはや役割を失った袋のような右腕の皮膚がだらりとたれていた。そして肘から骨のように伸びるチェーンソー。明らかに異常だった。杉下の右腕はチェーンソーと化したのだ。 「ハァ…ハァ…」 杉下は荒い息で、自分の腕を見て目を見開いていた。 「おい…杉下…?」 俺は震える唇を噛み締め、なんとか声をだした。しかし、杉下は口元を歪める。 「智也ぁ…見ろよこれ…すごいと思わないかぁ…」 目が完全に狂っていた。焦点がまったくあっていない。 「ハハ…ハハハ…」 杉下が急に笑い出す。俺は少しずつあとずさった。 「智也!!」 翔太が叫んだ。俺はハッとした。目の前でチェーンソーと化した右腕を振り上げていた。俺は震える足で一歩引いた。チェーンソーが轟音でうなり、その振動を空気で感じた。 「智也!!逃げろ!!」 カズノリが声が聞こえた。 「なんなんだよっ!?」 俺は身を翻し、背を向けて走り出した。恐怖からか、足がもつれてうまく走れない。背後からチェーンソーの音が迫る。杉下は正気を失い、叫びながら追ってくる。その叫び声はもはや笑い声にちかい。 「!!」 その瞬間、俺は足がもつれ、頭から転んでしまった。振り返ると、目の前で杉下がチェーンソーをうならせていた。 ―死ぬ 血の気がひいた。死の恐怖が音と共に俺の体へ浸透していく。 「智也ぁ!!」 美咲の金切り声が聞こえた。
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