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俺は1組の教室の扉を開けた。ついさっきと変わらず、クラスメイトたちは机に寝ていた。
教室はこんなにも暗かっただろうか。
いつもとは違う異様な空気が漂う。俺は空いてる席を数えた。
1、2、3、4、5、6…
「やっぱり2つ余分に空いてる…」
美咲が呟いた。
確かに席が6つ空いていた。このクラスで意識が戻ったと知っているのは、俺、カズノリ、瞳、そして美咲の4人だ。確かに2つ余分だ。一つは慌てていたのだろうか。椅子と机が倒れている。
席がえをしたばかりで誰がどこの席だったか覚えてない俺は、教卓の上の座席表を手に取った。
「あの倒れてる席、杉下じゃないか?」
カズノリが倒れている席を指差した。座席表で確認する。確かに杉下秀だ。
杉下は小柄で、臆病なやつだ。この状況をみて、慌てて教室を出て行くのが想像できる。
「もうひとつの席は…」
俺は座席表に目を通した。
「ねぇ…」
突如、廊下から声が聞こえた。俺たちは反射的に振り向いた。
「杉下!!」
カズノリが廊下に立つ男子生徒の名を呼んだ。杉下はいまにも倒れそうなうつろな目をして、右手を守るように体を丸めていた。
「大丈夫か!?」
俺は声をかけ、杉下に駆け寄った。
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