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サトババから受けた唯一の優しさも紹介しとこうと思う
朝の日課
“健康観察”という
出席とりがあった
先生に名前を言われると
『はい!元気です!』
と返事の後に体調を言わなければいけない
皆、素直に
『はい!元気です!』
と言うもんで
私はこの業務をつまらなく感じてた
だから、この自己主張が自由に認められるこの場で
私は思う存分楽しんだ
『はい!風邪気味です!』
『はい!頭が痛いです』
『はい!鼻がつまってます』
『はい!喉が痛いです!』
こんな具合に
名前を呼ばれる前に何を言おうか考えるのが楽しかった
そんな
本当は元気な私にバチがあたる事となる
“のどヌールスプレー”
は知っているだろうか
ちょっと喉がガラガラした時に、
喉が痛い時などに、
ワンプッシュするだけで喉に直接、薬が塗布できる
あれである
当時は話題奮闘中の画期的商品で
私も憧れを抱いた
幼き日のアイテムのひとつである
試したくて仕方なかった覚えがある
サトババも歌が好きだっただけに
“のどヌールスプレー”のCMが入ると
すぐ
それを所持していた
脇の制汗スプレー同様に
TPOかまわず
どんな時も
大口をあけ
シュシュっと口の中にスプレーした
“スプレー”はまたたくまに彼女のお気に入りアイテムとなった。
ある日
いつも通り“健康観察”が行われ
私は、その日も何を言おうか考えてた
喉が痛いという子が1人いたので
それに便乗する事にした
だから名前を呼ばれた時
『はい!喉が痛いです!』
と言った
クラス全員の健康観察が終わり
喉が痛いと訴えた
私を含む2名の前にサトババはやってくる事となる
まずはサトババの目の前にいた子からだった
その子の前に行くと
『さぁ、口をあけて』
医者さながらに指図した
サトババがジャージのポッケから出した
のは何を隠そう
ご愛用
“のどヌールスプレー”だった
どんなに
子供とはいえ
バカにしてはいけない
嫌な物は嫌なのである
サトババの物は使いたくない
鉛筆や消しゴムじゃないんだから
“のどヌールスプレー”なんだから!
スプレーの先の部分は確実にサトババの口の中に入っていたし
スプレーの先が舌に当たっていたって不思議ではない。
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