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「…あー…あんちゃん?大丈夫か?」
「…ああ、平気、助かったよ」
そう言いながら立ち上がろうとする男の足は震えていた。
俺は肩を支える。
「ごめん…見ず知らずの俺の為に」
「気にすんな。俺も絡まれたんだし正当防衛だよ」
男は「そうだ!」と何かを思い出したように手をポンと叩いて、持っていた鞄から何やらパンフレットのような物を取り出した。
「…白鳥温泉?」
「ああ俺、その旅館の一人息子。良かったら来てくれよ。今は無理だけど、お礼ならその時出来るからさ」
…いい宣伝にしたな、と俺は思った。パンフレットを受け取る。
「有難う、仲間を呼んでも良いか?」
男はニッコリ笑い「もちろん」と答えた。
そのまま男と別れ、腕に巻いている時計を見る。
「…大遅刻だなこりゃ…」
俺は思い切り走り出した。
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