桃花

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あたしはどこにでもいるような退屈した女子学生だった。 転校してきたせいで前の学校より遅れている授業とか、車がないと移動できない環境の不便さとか、ふらっと立ち寄れるような雑貨屋とかカフェとかがない住宅地ばっかりの田舎町とか。訛りのせいで鈍くさく見える同級生たちとか。 何もかもが不満だらけだった。 なんで両親がこんな辺鄙なところに家を建てたのかサッパリ判らなかった。 なにせ見渡す限り店一つないのだ。 国道とは名ばかりの細いたった一車線の車が滅多に通らない道。二時間に一本しか来ないバス。 常磐線の駅まではバスで一時間半かかるらしい。しかも片道1850円もする。 都内に住んでた頃は常磐線の存在すら知らなかったのに、今や東京に繋がる唯一の生命線だ。 高速バスもこんな田舎までは来ていないのだ。 あーぁ。 渋谷でぶらぶらしていた放課後が懐かしい。 全く、すべてがつまらない。 本屋に行くのすら車で30分もかかるのだ。そして本屋は何故かCD屋とCDレンタル屋が合体した施設になっている。 便利といえば便利なんだろうけど片道30分じゃ車も乗れないあたしでは滅多に来れない。 あたしは年齢が満たし次第、原付免許を取ることにした。ペーパー歴15年のお母さんの運転は怖いし。
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