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玲奈はそう言って立ち上がると、兵志に背を向けて帰ろうとした。
「でもよ、姫香が臣成のことを嫌っていることぐらい知っているだろ?」
「ええ、もちろん」
足を止め、振り向かないまま兵志の質問に答える玲奈。
「だったら、どうして?」
「どうして、か……」
少しうつ向き、玲奈はこう言った。
「私はたぶん、あんたを取り返したいんだと思う」
「はあ?何だよそれ。だったら、どうして次年度要請用紙に書かなかったんだよ?」
「どうしてだろうね。あの時はそんなこと、これっぽっちも思わなかったのに……」
少し寂しそうにつぶやく玲奈の背中を、兵志はただ眺めるしかなかった。
「まあ、良いわ。どうせゴールデンウィーク明けには、あんたが私の相方になるんだから」
「それじゃ、私帰るよ」
手をヒラヒラさせて、玲奈は公園を後にした。
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