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まさか聞こえているとは微塵も思っていなかったようで、いきなり変貌を遂げた姫香に焦りを隠せなかった。
『これじゃあ、姫よりも鬼のほうがあってんじゃないか?』
兵志は危険をいち早く察知し、なんとか姫香をごまかしてみた。
「聞こえませんでしたか? 私たちの昇降口はそちらではありません。 こちらです」
「ふぇ? ……そ、そうだったな。 すまない、いきなり怒ってしまい」
「大丈夫ですよ? 怒られるのには慣れているので」
『危なかった、もう少しで鬼の餌食になるところだったな。 これから気を付けないと』
たまたま危機を回避した兵志は、姫香をクラスまで送ると自分のクラスに向かった。
「はあ、ようやく解放された」
兵志は自分のクラスに入り、朝から続いていた緊張を解きほぐすかのように大きな溜め息を吐く。
「おやおや、朝からずいぶんと大きな溜め息だこと。 いったい何があったのですか?」
兵志に声をかけたのは、窓側の席に座っていたクラスのエリート。
「またお前か、別にどうでもいいだろ? エリートさんにはまったく関係のない理解し難いことだろうからよ」
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