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“栄光の両手(ハンズ・オブ・グローリー)”
腕の付け根、そこに命力を集中させ、創りだす。
(生まれろ……)
勝利を掴む為の腕。
(片腕は……犠牲だ)
自己犠牲した分だけ、私の力は強く発揮される。
手を武器にするだけでなく……。
――――この腕そのものを、“兵器”に!!
生み出されていく光の腕。
神の遣いである天使がその翼を広げるように、眩く輝きながら。
“勝利を掴む神の右腕(グロリアス・オブ・ヘヴン)”
この世界に体現される新しい腕。
それを左手に添え、しっかりと己の武器を握り締める。
「勝利か……」
久しく忘れていた気がする。
背中越しに感じるこの死の予感。
ひりつくような紙一重。
(あの真田でさえ、ここまで感じさせてくれなかった……)
一方的に奪うのではない、命のやりとり。
(なあ、劉備、孫権、曹操……)
“メビウスの輪“の発足当初、私たちはそうやって闘い続け、強くなり、同志を増やしていった。
近藤との一騎打ち。
国王との戦い。
オリンポスへの挑戦。
その中で勝利を勝ち取る為に何が必要なのか、私なりに真理にもたどり着いた。
(もう随分と昔のことみたいだ……)
あれからどれくらいの月日が過ぎ去っていったのだろう。
どこか、仲間に頼ることを憶えてしまった。
いつからか、個人で戦う自由さを失っていた。
(けれど、)
メビウスの輪の初期メンバーは、もう私を残すのみ。
「なあ、土方」
チームも仲間も関係ない。
「一つ、賭けをしないか?」
個人的で私的な、それでも、この先の運命(世界)さえ左右するような、そんな極めて稀有な提案を。
私は目の前の漢に投げかけた。
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