闘い続ける者たち

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19/ ―――――柳生十兵衛――――― 『“メビウスの輪”とは永遠を意味するんだ』 まだ真実に辿り着く前、空に浮かぶ月を見上げながら神はそういった。 まるで聖杯でも持つかのように、手の中のグラスを傾ける神。 メビウスの輪に我輩が単身乗り込み、神を説得したあの日の夜。 チーム解散の決定が下され、誰もいない伽藍洞(がらんどう)のように静まり返る大聖堂のテラス。 『私たちが死んで土に還り、世界が終わってしまったとしても……また世界が始まるときが来るのなら、同じように巡り逢い、共に生きていこうという……私たちの意思』 それが、メビウスの輪の意味の一つなのだと、神はいった。 耳を澄ませば聞こえてきそうな星々の囁き。 「そうか……」 否定も肯定もしない。 ただ、月明かりに照らし出されるその神の横顔を眺め、言葉だけを返す。 『そして“表”と“裏”、その両方が“共存する”メビウス帯にはもう一つの意味がある』 “テーゼ“と”アンチテーゼ”、そして“アウフヘーベン”。 『世界(物事)の真理と同じだよ』 優しく淡く、光のヴェールに包まれる神。 何かから解放されたように、すっきりした顔をしながら言葉を紡いでいく。 『なんでだろう……不思議だな』 こんな夜だからか、それとも久しぶりに口にした酒のせいか。 『今まで誰にも話したことのないことを、何故か素直に話せてしまう』 「我輩だから、とは言わないのか?」 『さあ、どうだろうな……』 そこで会話は区切れる。 しばらく黙ったまま月の光を浴びる神を横に、我輩は手にする杯の中の残りを飲み込むと、静かに立ち上がって、その場を後にする。 『なあ、柳生十兵衛』 そんな我輩の背に、神は一言だけいった。 『私の本当の名、』 ――――それを最初に呼ぶのは、お前かもしれないな。 期待なのかそうでないのか分からない。 けれど、我輩はそうしてあげたいと心の中で想い、返事の代わりに頷き返した。  
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