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水面に映る氷山のように、逆さまに伸びる氷の大地。
その上での戦闘の激しさを物語るように、氷山は大きな氷柱(つらら)を幾つも落下させる。
十メートルはあろうか、我輩は自身よりも遥かに大きなそれらを打ち払いながら、氷上にいる気配を探る。
まずは氷上の上に一つ。
太陽を凝縮したように強い命力に溢れた人間。
その周りに二つ。
例えるなら衛星、攻めあぐむようにその太陽の周りを飛び交っている。
(このスキルはおそらく土方殿のもの……)
つまり、その氷で創られた大地に立つのは本人以外いない。
(だとしたら――――)
最早、人間の手の届く領域を遥かに凌駕した力を手にしているということになる。
(そして、気になるのは……)
神と同等の力を持ったもう一つの者。
「一体……誰だ?」
ズウウウゥゥゥゥン。
更に響く衝撃。
言っているそばから、さっきよりも多くの氷柱が大地から削り落とされる。
大気さえ震わせる振動。
これだけの距離があっても、肌で感じ取れる強さ。
どちらが誰かも判別できない。
互いにこれ以上ない、強力な武器を以て闘いに挑んでいる。
「くそ!!」
そこに我輩が行けばきっと、勝てる。
辿りつけば、きっと。
急ぐように叩き割る氷柱たちの影。
「十兵衛……か」
その奥に、我輩の見知った顔が…………いた。
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