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「速え、速え!!」
何が可笑しいのか、信長の疾走を眺め、ゲラゲラと嗤う土方。
地に足をつけるその瞬間、氷のスキルが槍のように飛び出してくるその大地で、信長はそれよりも速く動く。
右、左、右、右。
不規則にその身を左右に振りながら、土方の懐に潜り込もうとする信長。
直線的というより、点と点を結びつけるような動き。
「流石、“覇王”と呼ばれてただけあるな!!」
声を大きくして、向かい来る信長に叫ぶ土方。
「速い?」
勘違いするなよ、土方。
「天草のお守りをしすぎて、お前が鈍っただけだろう?」
そして、信長の腕が突き出される。
エンプティインジェクション“不倶戴天(ふぐたいてん)”。
――――“羅刹の黒”。
心臓を抉りだすかのように、遠大な命力を凝縮させ右腕を伸ばす。
「じゃあ、お前も鈍れよ!!!!」
ズウウウゥゥゥゥン。
(土方め!?)
氷の大地が沈み込むような重力。
ありったけの圧力を以て、奴が信長の動きを封じにきた証。
「俺に対し、悪手だろう?そりゃあ」
瞬間、隠れていた左手と共に差し出される刀。
信長の愛刀“長谷部国重”。
「お前の重力は、この力(刀)で圧し切る!!」
掛かる重力を、たったひと振りで押しのけると、信長はその手で土方の顔を掴み、そのまま地面に叩きつけた。
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