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氷の大地を砕きながら相手を圧し伏せる信長。
粉砕された氷は紅く染まる空の光を反射させ、輝く。
(刀も、戦い方も……確かに)
彩られながら煌(きらめ)く氷の雨。
そして、その衝撃によって起こる風。
(確かに……お前だ)
地表を疾り、足元から伝わる衝撃波は、私の髪を勢いよく後方へと流す。
(なのに、何故だ?)
その信長らしい闘いを目にして、それでも尚、私は思う。
説明できないことなど、この世界なら幾らでもある。
(それでも、)
何かが違うと、私の心によぎる。
「消え失せろ……!!」
土方の顔面を押し潰したあと、宙に浮かび距離を取る信長。
その背も、その言葉も――――。
すべて、お前(信長)なのに。
「…………ククク」
ハハハ、と渇いて響く高らかな嗤い声。
「消え失せろ?だと……?」
土方の額から流れる血液。
その口元まで流れる血を、拭うこともせず、舌を這わせ舐める土方。
「人間てのは元々、神が創りだしたもんだろ?」
なら、受け入れろよ。
「そんな神(運営)が生み出した純粋な人間(プレイヤー)の意思……」
それこそが、神を脅かす“兵器”なんだってな。
「少なくとも、“黒田”はそう願ってたぜ?」
このゲームの製作者である名前だけを残し、土方は再び私たちに牙を突きたたて始めた。
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