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強く突き立てられた拳。
それは土方の身体の中心にめり込むと、振り抜くと同時に凄い速度で突き離す。
氷の大地を抉(えぐ)るように削りながら、その端まで転がり飛んでいく土方。
「クソが!?」
地面に手をつけ、血反吐を吐きながら土方は立ち上がろうとする。
「神、」
拳を振り抜いたままの姿勢で信長は私にいう。
「見てるだけじゃ、何も変えられないぞ?」
傍観者の一部となってしまった私にそういうと、追い撃ちをかけるように信長は飛び出していく。
「とんだ”死神“だな……」
これならまだ、“あの死神”の方がマシだった、とその後を追うヒカル。
「なら、またその死神にトドメでも刺すか?」
その神の刀で、と返すと、私も二人の後を追う。
「また半年も足止めを喰らうのは御免だ」
「確かに、そうだ」
私の冗談に少しだけ口元を緩めて答えるヒカル。
(それに半年もしたら、確実にトリガーは引かれてる……)
有りもしない未来。存在しないその日。
(そんなのは描くものではないか……)
いくらブラックアウトというゲームから解放される術があったとしても、このゲームが存在する以上、この世界の存在は危うい。
(なら、救うべきなのはこのゲームの被害者だけではない)
この世界そのもの。
――――60億の命。
(そのすべてを救ってこそ、”神“なんだろう?)
かつて、レッドキングダムの国王が私にいった言葉。
『目に見える、手の届く人々を救うのが王』
“逆に目に視えない、すべてを救うのが神だ”
(ならば、)
今、此処で本当の“神”になってやろうじゃないか!!
「私は、すべてを救って――――”神”になる!!!!」
誰に言うでもない、自分自身に言い聞かせるようにして、私は二つの背を追った。
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