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「神!?」
傀儡である土方と刃を競り合わせながら、ヒカルは言葉を放つ。
「ヒカル……」
止めどなく胸元に空いた空洞から血は流れ行き、意識は肉体から引き剥がされるかのように強制的に霞がかっていく。
「お前の望むものは……龍の心臓部」
そこに……ある。
「……――逃げろ!!」
ここは、もはや戦場ではない。
平清盛という漢による、一方的な暴力と搾取の場。
「ここまで首を突っ込んだ人間を、私が素直に帰すと思っているのか?」
ズルリ、と突き出したのと同じように私の胸元から手を抜く清盛。
「あんたの意思など関係ない」
生憎、俺には優秀な仲間がいるんでね。
そういうと、ヒカルはローブの中から機械を取り出し、そのボタンを押す。
「“強制送還(サルベージ)”か……」
「答える必要はない」
まるで電波通信が滞ったように、ヒカルの身体は平面になりノイズが走り始める。
「……他には?」
その消えゆく中、ヒカルは私に訊ねる。
「あとは……柳生十兵衛」
奴に、聞け。
「あいつは、真実に……最も近い漢、だ」
おそらく、そういう運命を背負って生きてきた人間なのだから。
「黙れ……!!神」
その言葉に反応するように、具現化された人形どもが踊り始める。
言葉通り、私を黙らせようと、各々の武器を掲げ。
「頼んだぞ……ヒカル」
――――グシャッ。
私の全身を、あらゆる方向から串刺しにする。
(嗚呼……)
心臓を既に失くしたはずなのに、心も身体も、こうも痛みを感じるなんて知らなかった。
(高杉……晋作といったか……)
あいつが残した言葉通り、私はかつての仲間である誰一人の命も救うことなく、呪われるように地獄の淵へとこの身を臥(ふ)した。
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