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ジオラス国首都部に位置する〈セベリア州〉
ここでは〈兵士〉の育成が行われている。勿論誰も自ら進んで兵士になりたい人なんていない。
例の独裁者によって17歳を越える男は半強制に部隊に入れられてしまう。
我が子可愛さに子供を差し出さなかったり、家の中で匿っている人も少なくない。見付かればどんな事をされるか容易く脳裏に浮かんでくる。だが、見付からなければ良いだけ。
寧ろ其の方がいい。
国民によるせめてもの抵抗。
――ただ、これが中々難しいかった。向こうも此方がそう易々と渡さない事など百も承知。近所に訊いて周り、もし素直に吐けば、お前の所は見逃してやらなくもない、と持ちかける。
条件として三世帯……。 多いと捉えるかどうかは各々異なるが、他の家族を犠牲にすれば自分の子供は助かる、というもの。
中には心が痛み錯雑とした感情になる人もいれば、他人が犠牲になるだけで我が子が助かるなら、という親も中にはいる。口を割らなくて射殺された人も少なくない。
信じられないくらい簡単に殺す。
こういう時人間は冷静な判断が出来なくなると感じたのは、「口を割る=私には息子がいます」と遠回しに教えてしまっている事。
だから、結局は子供は連れていかれてしまう。
† †
「……すいません」
部隊に入れられて早半年。要塞とまではいかなく、建物全体が分厚いコンクリートで出来ており、昼間だろうが薄暗く、日も殆んど入らない場所。足元が冷たく、壁のあちこちが肌寒く感じ、円状で囲まれた作りの上層部分には無数の監視用のカメラが取り付けられている。
ここで毎回毎回朝から晩までずっと見張られている。逃げ出そうとすれば拘束され、拷問が待っている。
酷い〈指揮官〉になると、瀕死状態になるまで痛め付け、喋ることは愚か廃人同様にまでされた子も。
「貴様……我らが主導者ドロジーⅢ世様の事を思えば、これくらい苦じゃないだろうがッ!」
「Ⅲ世ってなんだよ……Ⅲ世って」
「聞いてんのか!」
――ビクッ
思わずアホくさい名前に少年はポツリと呟いてしまい、体が縮こまる。
「ヤバッ」と思ったが幸いなことに聞こえて無かった様子。
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