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――どうやらこのドロジーっつーふざけた名前が、馬鹿独裁者らしいな。
ルークは内心そう思いながら、しっかりとその名前を頭に刻んだ。
「ルークとか言ったな。一体いつになったら出来るんだこの出来損ないが!」
引き続き啖呵が飛んでくる。
ここでは、20キロもある鎧を身に付けながら雑用をこなし、剣や銃を扱えるようになれと言われていた。その重さに堪えるだけで精一杯の少年は、剣すら構える事が出来なかった。
それで体力作りの為に鎧を纏ったまま2時間の走り込み+筋トレ1時間をやるようにと命じられていたのだった。
「ふざけんな! 無理難題押し付けてんじゃねーよカスが、大体てめぇは出来んのかよ、あ?」
――と少年は声を大にして言いたかったが、「自分が出来ない事が分かると相手が傷付くだろうから、胸の中で留めておこう」と、少年の精一杯の心の叫びは表に出る事はなかった。
まだ続くお説教だったが、ルークにはどこ吹く風。
膝の痛みの方に神経がいってしまい、目の前から降り注がれる言葉は、止まる事なく耳から通り抜けていた。
途切れ途切れの単語が頭に入ってくる程度。
しかし、次の言葉に耳を疑った。
「分かった、もういい。これから街に出てもらう、ちょうど反逆者がいたから、その銃で殺せ。出来たら今回は見逃してやる」
――……今、何て言った?
――殺せ?
――誰を?
――……俺が?
言葉の整理した途端ルークの表情が強張る。
今まで自分がどんなに卑下されようが罵声を浴びせられようが殴られようが、反骨精神で耐えてこられた。
――殺せば見逃してやる
頭の中でその言葉が何度も何度も繰り返し再生される。人を殺すなんて出来るはずが無い。この世に生を受けてもうすぐ18年。
ルークにはもう答えが出ていた。
「お断わりします」
ガンッ!
「ッ……」
視界が歪む。ルークの発言したとほぼ同時に、相手が手に持っていた無数の細かい刺がついたフレイムのような物を思いっきり振り回したのだ。
「てめぇに拒否権はねぇんだよ」
倒れこむルークを見下ろし、口の端を吊り上げで不気味に笑う。
ルークはそんな指揮官の姿を見る前に、途切れ途切れに聞こえていた台詞も遠退いていき、気を失った。
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