第1章

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 反逆者。  この国が対象とするのは ・部隊に入らないもの ・命に背くもの ・国家に対して武器を向けるもの ・反政府組織、またはそれに近い組織を作るもの ・魔法を使用できるもの  ――等々、出せばきりがなく、それ程までに反逆を恐れているということ。特に上に上げた末項。グローディアの人々が対象となるのだ。  今は大分勢力が落ちているとはいえ、矢張り力は未知数。武器とは違うその能力が驚異と感じているのだろう。  100年前に侵略しようとしたのもその理由だ。  一人一人の力は微々たるものでも、集まれば強大な力になりかねない。     †    † 「ってぇ……あのやろー」  辺りはコンクリートの壁一面、他にはベットがあるのみ。  今はその上に座っている。  指揮官によって殴られたルークは、自分の部屋に連れていかれていた。小一時間ほど前に目が覚めたのだが、鎧を着けていたとはいえ頭を殴られれば流石にこたえる。 「……」  ルークはずっと考えていた。ここの連中は一回やらせると言ったら是が非でもやらせる事は、この半年で嫌でも分かった。  人を殺めたら奴らと同じになるのが嫌でたまらない。  何が悲しくてこんなことしなくてはならないんだ、と頭が混乱していた。  ――どうすれば防げる?  抵抗するだけして、自分が死んで助かるならそうしたかった。  ――だけど、本当にその人は助かるのか? 家族は何て思うだろうか?  ルークが17歳を迎えた時、幸い部隊に気付かれなかった。  この時がずっと続いて欲しい。  そんな願いも虚しく、その三ヵ月後に見付かったのだ。家は人里離れ、国の端の方に位置する山々に囲まれた所謂田舎の方へ引っ越したから、そう易々と見つかるわけがない。  何故見つかったのか。  我が子可愛さに、以前住んでいた街の近所の人がちょうど息子がルークと同じ年齢だったこともあり、ルークの名前を出した人がいたのだ。連れていかれる時、母は最後まで抵抗した。始めは軽い脅しで腕を切られたが、それでも息子を抱き締めて離そうとしなかった。  そんな母の抵抗も虚しく、抗えば抗うほど傷が増え、腕の中にいたルークは耐えきれなくなったルークは自ら母の元を離れた。  道具【ルーク】さえ手に入れば流石に兵士もこれ以上手を出さない。  泣いて擦れた声で息子の名前を呼び、泣いていた母の姿が忘れられなかった。
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