地下のまる穴

28/29

188人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
それに、親切にしてくれる新しい家族や友人たちに迷惑や 心配をかけたくなかったのです。せっかく高校にも復学し、 過去の話をしなくなった私に対して安心感を感じてくれている周囲に対しての 申し訳なさ、またカウンセリングに通う苦痛を考え、 私は見て見ぬふりをする事にし普通に人生を送ってきました。 17年が経ち、私も今は都内で働くごく普通のサラリーマンです。 ではなぜ今さらこんな事を書き記そうと思ったかと言うと、 先月、私の自宅に封書の手紙が届きました。匿名で書かれた手紙の内容は 「突然で申し訳ありません。私はあなたをよく知っています。 あなたも私をよく知っているはずです。あなたを見つけるのに とても長い時間と手間がかかりました。あなたは○○という名前ですが、 覚えていますか?また必ず手紙を送ります。この手紙の内容は誰にも 言わないでください。あなたの婚約者にも。よろしくお願いします」 という内容でした。○○○と呼ばれても、私にはもはや全くピンときませんが、 以前そんな名前だったような気もします。 手紙が送られてきた事に対しては不思議と恐怖も期待もなく、 どちらかというと人ごとのように感じました。そして、その手紙の 相手は先週二通目を送ってきました。
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加