根付

6/14
前へ
/311ページ
次へ
立ち去ろうと、「あの、それじゃあ失礼します。」と声を掛けかけた所で、ふと、樹の枝が大きくざわつき急に寒くなりました。先ほどまで暖かかったのに、歯がガチガチ言うほどゾクゾクと体が震えました。 寒くなってきた方向に目を向けると、神社の入り口に何か黒い者がいました。 黒いモヤの様な、でも人型に近い黒い何かでした。 目にした途端、激しい眩暈と吐き気に襲われ、「うぅ・・・はっ・・・!」と思わず声が漏れる程の息苦しさ。 ズチャ・・・ズルズジュ・・・ズチャ・・・ 気味の悪い濡れたような音を立てながら、近付いてきます。 近くなってくると、黒い中に皮膚が解けた後焦げたような黒い肌らしき輪郭や、おそらく長い髪であろうことが分かるようになりました。
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加