根付

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受け取るか迷っていると、手を取られ掌に載せられました。 「ありがとう。」 男の人の声が聞こえ、お礼を言うのは私の方なのに、と顔を上げた先にはもう男の人は居ませんでした。 それどころか、顔を上げる瞬間まで暖かな日差しが出ていたはずなのに、辺りは茜空になっていました。 手に持っていた筈の根付もありません。 再びの奇怪な状況にまたあの黒い者が来るのではないかと、慌てて神社を駆け抜け親戚宅に戻りました。 親戚宅に戻ると、こっぴどく祖父と父親から怒鳴られ怒られました。 戻ってこない私を心配し、家族や親戚が車まで出して探していてくれたそうです。 家族に神社に行くことを告げていたし、神社にずっと居たのですからこんな騒ぎになってるとは思わず驚きました。 ずっと神社に居たことを言ったのですが、神社には始めに探した後も何度か探したのだそうです。しかしその狭い敷地内には私は見当たらなかったとのこと。 何処に行っていたのか正直に言うようにと詰め寄られたのですが、本当にずっとブランコの側にいたし、嘘は言ってないので他に答えようがなく、あの変な話をしたところで信じてもらえるか分からないので、男の人に会ったことだけを話しました。 みんなの中では、『知らない人に話しかけられて付いていった。』という解釈をしたようで、更に怒られゲンコツも頂きました。
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