・平凡な日常

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毎日の生活に慣れだした。 それでも本当に楽しいと思えた日々は、今や昔。 五月晴れした外を眺めながら久しぶりの休日に、床に座って参考書を片手に勉強。 しかし陽当たりが良すぎて、つい船を漕いでいた。 平和な日、…なはずだった。 「はい、サッちゃん! どいてどいて!」 ゴンっと、彼女の頭に鈍い音が響いた。 「…クッ~…!み~な~?」 不意討ちを喰らい、女は痛い頭を擦りながら、とんでもなく不機嫌な声で言う。 しかしこの女に勝てた記憶は一度もない。 「天気いいから早く洗濯物干さないと! アタシ、逃げ出した身だもん。 百合ちゃんやサッちゃんに“只でさえ”、迷惑かけてるんだもん」 「…」 今、ベランダで洗濯物を干しているのが、真弓 美那。 大学を卒業後、大手のアパレル会社で働くも、そこで恋した男に騙されて会社をやめた。 彼女の父親は再婚しているため、未だに義母親とうまくいかないらしく、現在はパートをしながら仕事先を探し中。 正確に言えば、傷心中のためパートを選んだ。 そんなことを言う美那に、女は参考書で彼女の頭を叩いた。
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