第一話 色あせた七色変化球

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「いいですか?変化球のとき捻るのは肘、肩に負担をかけます。」 変化球のときに捻るのは負担がかかる。それはパチュリーの講義で何度も聞いている。だが、変化球をメインに使う軟投派の自分からしたら軽く捻る必要がある。特にカーブをメインに使うアリスには捻る事は切っても放せない関係だ。 「もちろん、大きく捻る事は大きな変化を生むことがあります。しかし、それは逆に球速、そして球威を失うことになります。」 それも聞いた。だが、アリスからしたらどうすればいいのか分からない。 「たとえばスライダー、これは手首を固定して投げる。まずはこれです。」 話をこっそり聞きながらアリスも持っていたボールを握る。 「イメージはストレート。あくまでストレートの感覚です。」 そういって大妖精がブルペンマウンドに上がる。そして、投げられた。左手で投げられたサイドスロー。 それは明らかに自分のものを超えている。何故だろうか。投げられたスライダーは確かに変化は大きくない。でも球威もキレも確実に、明らかに、自分の上だ。 「…スライダーだけではありません。変化球は手で投げてはいけないのです。では、変化球でどう、三振を取るか。どう見せるか。」 そう、変化球は曲げて打ち取るのではない。野球の打ち取る原理は視野と脳の混乱だ。それはつまり、“見せ方”である。リリースポイント、つまりボールを離す位置も十二分に関係している。アリスがサイドスローを選んだ理由はボールを真横から投げれるからで、自分の持ち味であるカーブが生かせるからだ。 簡単に言うなら右投手のアリスはカーブを投げた際に、右打者の背中のほうからボールが来るように見える。これは右打者からしたら恐怖以外の何者でもない。 では、なぜ、あそこまで打たれたのか不思議である。 「では、どう見せるか。つまりは投げる位置が最も重要です。」 リリースポイントの説明が始まった。
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