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宝船異変が終わり、打ち返し遊びが流行り始めた頃。幻想郷リーグ異変が起こるまで約半年になった頃である。
あの周りを騒がせた大妖精は打ち返し遊びの輪に無かった。
勿論イジメではない。自ら参加して居なかった。
理由は単純明快。下手くそだから。
練習は毎日欠かさずやっている。だが、遊びのレベルではない。
たった五メートルの壁当てが精一杯。極めつけはエラー。
平凡なフライどころかゴロすら弾く。
今日もまた同じ失敗を繰り返していた。
「…また同じ事。」
ぐっと奥歯を噛み締める。もう一度ボールを壁に投げる。軽く当たったボールは不規則にバウンドすると、地面の出っ張りに当たったらしく予想外の方向に逸れた。
慌てて追いかけると、人影が見えた。
「おや、あんまり遅くまでやってると一回休みになるよ。」
「へ?」
ボールを掴んだまま現れた死神が忠告してきた。辺りを見回せばもう暗くなり、ミスティアの歌声が仄かに聞こえてくる。
「精がでるね。打ち返し遊び…だっけ?あの野球モドキ。」
「野球…?」
「打ち返し遊びの本当の名前だよ。英語ならベースボール。」
死神の顔は暗くて見えないが、小町ではないのは確かだ。
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