玉を巡る二人の愚者

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あの後、生徒達からの責める視線に耐え切れず、俺達は食堂から生徒会室に移動した。 「何なんだよあいつっ!!留年って!!」 ギャーギャー喚く転入生の声が耳に障る。 あいつの声は甘いテノールで聞いていて心が安らいだ。 「ってか何であいつが紀一の部屋の鍵持ってたんだよっ!!」 「和人は俺の恋人だったから」 そう、全ては過去のこと。 恋愛不感症のあいつが俺に告げた“愛してた”という愛の言葉。 過去にしたのは自分の愚かさのせい。 「き、紀一恋人いたのかっ!?あ、でも別れたんだよなっ!!」 嬉しそうに笑う転入生に腹が立つ。 「別れたとしても俺はあいつだけが好きだ」 そう告げると転入生が俺の肩を掴んで喚いた。 「何でだよっ!!別れたんだろ!?何であんな奴っ、俺を見ろよっ!!」 「見た所で和人には敵わない」 「何でっ!?お前のこといらないって言ったんだぞっ!?最低じゃねえかっ!!」 「和人を悪く言うな…っ」 俺は転入生を睨みつけた。 「最低なのは俺の方だ。俺があいつを傷つけたんだ。あいつに振られるのも当然」 「でも…っ」 「俺は和人を愛してる。お前を好きになることは絶対にない」 そうきっぱり告げると転入生は泣きながら生徒会室を飛び出していった。 俺はソファーにもたれて目を閉じた。 瞼の裏には鮮明に和人の姿が浮かび上がる。 無表情なあいつのふとした拍子にはにかむ顔が好きだった。 他人に興味のなさそうなくせに困っている人間を見捨てることのできない優しい所が好きだった。 あいつの全てを愛している。 けれど、二度とあいつは戻ってこない…。 .
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