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『俺と付き合ってくれ』
『…無理だ』
『何故だ』
『俺は恋愛感情がわからねぇ。人を好きだと思えねぇ』
『なら俺が恋愛感情を教えてやる。俺に惚れさせてやる』
『自信満々だな』
『当たり前だ。俺様に惚れないはずがないからな』
『自意識過剰ナルシストめ』
『うるせぇっ!!いいから俺と付き合え』
『え、強制?まあいいけど』
『絶対愛してるって言わせてやるからな』
『ははっ、期待しとくわ』
そんなやりとりをして紀一と付き合いだしたのは二年前の俺の誕生日。
この時の俺は呆れながらも内心期待していた。
こいつなら俺に“愛”を教えてくれるかも、俺に“恋”を教えてくれるかもと。
事実、俺は紀一に多くの感情を教わった。
恋愛感情かどうかはわからないけどぽかぽか温かい感情。
それなのに、今俺の心はこんなにも空虚で寒い。
俺の視線の先には醜い転入生といちゃつく紀一の姿。
友人は不安そうに心配そうに俺を見る。
ああ、お前はもう俺を“愛”していないのか。
ならばもう終わりにしよう。
紀一が俺を愛していたからこそ続いていた関係なのだから。
俺は友人に一言告げて席を立ち、紀一の元へと向かった。
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