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「和人寝たね」
「ああ」
副委員長の言葉に委員長が和人の頭を撫でながら答える。
和人は平凡な顔立ちだけど優しくて気が利いて、学園の人気者。
生徒会の奴らみたいに性欲の対象じゃなくて、ただ仲間として好かれる。
特にここ、風紀委員会はそれが如実。恋愛対象として和人を見る人はいないけれど、和人は皆に可愛がられて好かれている。
勿論俺も和人が好きだ。
そんな和人は何故か会長と付き合っていた。
会長は和人のことを溺愛してたし、和人も会長のことを拒んでいなかったからこれならいつかは和人も人を愛せるようになるかもと期待していた。
だけど和人が会長への恋心に気付いたときにはもう全てが終わっていた。
和人の想いも、なにもかも。
初めて和人が人を愛せたのに気付いたときには終わっていたなんてあまりにも酷すぎる。
皆俺と同じことを考えているらしく、委員会室を見渡すと皆唇を噛み締めていた。
「お前ら落ち着け。和人がもう気にしていないのなら俺達は口出し無用だ」
委員長の言葉に副委員長も続ける。
「おれ達は何もしなくていいんだよ。和人が助けを求めてこない限りは」
「和人があのバ会長を好きだったのは過去の話。掘り返すな」
その言葉に俺達は頷いた。
会長は腹が立つが和人が気にしてないのなら忘れよう。
もう和人と会長が関わることなどないのだから。
「ん、ぅ…」
不意に和人がむずがるような声を出して身じろぎした。
その姿は大変愛らしい。
俺達の大切な玉。
願わくば次は幸せな恋ができますように―――…
――愛しき玉――
(WE WISH YOUR HAPPINESS!)
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