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1kmほど先に高い壁が見え、その内側にはいくつもの建物が点在している。
建国当初、さら地に壁と城だけだったらしいが、安全と商業を求めて多くの人々が住み着いた結果、ハイドル王国はかなり豊かな国となったと聞く。
「あれがー、私のものに…」
野心に満ちみちた発言はスルーしておいて、俺はおもむろに外套を脱いでメアーナにわたす。
「あ、あのこれ。ま、まさか私ににおいを…」
「お前が着るんだ。」
変な方向に話を持って行かれそうだったので早めに釘をさしておいた。
「私が?」
「その格好で人界の街にいくつもりなのか?」
メアーナは自分の格好ー、メイド服を見回して、さも不思議そうに「はい」と答える。
「人界でそんな格好した年端もいかない女の子を引き連れた人間は、白い目で見られるんでな。」
更に獣耳にシッポってどれだけ上手い組み合わせなんだ。
「ま、まぁご主人様がそう言われるのなら…。失礼します。」
そう言ってメアーナは俺の外套にすっぽりと身を包む。
さすがに腕はダボダボだが、丈はギリギリで地面につかないくらいだ。
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