Ⅰ ~イノチ~

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少女は口をマスクのように覆っていた服を下げ、口と鼻を出しました。 行き交う人々。 生活する人間。 少女はそれを愛おしそうな眼で見ていました。 ふと、喉が乾いたな、と思い少女は近くの店に入っていきます。 店の中には狭いスペースにも関わらず、簡易的な木のテーブルと椅子が大量にありました。 人もかなり入っています。 まだ昼前なのにビールを流し込む者。 隅で世間話に華を咲かせている中年女性達。 珈琲を飲みながら仕事をする人。 そんな人達を一通り見回すと、やはり少女は愛おしそうな眼をしていました。 少女は開いているカウンターに座り、バーテンダーに珈琲を注文しました。 すぐに湯気の上がっているカップが少女の前に出されました。
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