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お金が無い。
食堂で財布を開いた巧は鈍く銅色に光る硬貨2枚を見て、真っ先にそんな事を思う。
「なぁ拓海、ちょっとお金貸して」
名前が同じ、そんな細やかな事から友達になったそいつに僕は話し掛けた。
「またかよ……給料日まだなのか?」
渋々といった態度で財布を覗いている、さすが拓海。持つべきものは友人だ。
「ほらよ」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに両手を拓海に掲げる。
それと同時に、手のひらに若干冷たい感覚があったので、ありがとうと言いながらそれを確認。
「……何で100円?」
何と手のひらには、銀色に輝く硬貨が寂しそうに一枚、乗っていた。
「その金欠も巧の趣味のせいだろ?それなら自業自得だ」
そう言いながら、拓海は食堂第3位と好評な親子丼を1つ頼んだ。
いや色々今月は新刊が……じゃなくって!
「ちょっとまってよ!もう大学生の僕にたった100円でこの日を生きれるというのか!寧ろここで100で買えるものを問いたい!」
「コロッケ、あと詳しく言うとここは専門学校だからあくまで大学生じゃないな」
目もくれず注文しているそいつに反論、が即答されてしまった。そんな安いメニューがあったとは。
「…………………おばさん、コロッケで」
この即答が完全に僕の鳩尾あたりに決まってしまい、うなだれながら注文した。
なんだか横の親子丼の人、ニヤニヤしてるのが腹立たしいね。
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