壁

引っ越し

「大体こんなもんかな？」

額の汗を袖で拭いながら父が言った。
まだ夏本番では無いが、中年に差し掛かって少しお腹の出て来た父が大汗をかくには充分な気温だ。

「そうね。まぁ細かい所は、これからいくらでもなっちゃんの好きにしたらいいゎ。」

笑顔で父にタオルを渡しながら母が答える。…
そんな両親の様子を見て、この二人の子どもでホントに良かった…。
何だかそんな事を思いながら吉川夏希【ﾖｼｶﾜﾅﾂｷ】は幸せな気分に浸っていた。