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ガチャ……
「ただいま~。」
家の前で美琴と別れた俺は、玄関前で乱暴に靴を脱ぎ捨ててさっさと自分の部屋に入ろうとした。
しかしその足は一歩踏み出しただけで止まってしまった。
……ドックン…。
「……え」
俺の部屋は二階にある、だからどうしてもリビングの前を通らないといけない。
…ドックン……ドックン。
「あ……ぅ、と……うさ…。」
いつも通るリビング前の廊下、しかし今はちがった、そこにはあってはならない光景が広がっていた。
「父さん!!!!」
そこにいたのはぐったりとし、まるで死んだように地面に倒れこんだ父さんだった。
急いで父さんを抱えおこす。
……重い。
体にまったく力が入ってないのだろう、その身体は鉛のように重く、だらんとして動かない。
唯一生きているのがわかるのは、浅く早いが息をしているところだけだった。
「父さん!!どうしたんだ!!」
けれどぐったりしたまま答えは帰ってこなかった。
俺はあたりを見回した。
狭い廊下、そこにあるものは限られている。
『……電話?』
まっさきに飛び込んできたものはまだ古いダイヤル式のまっ黒な電話だった。
『……っ!!』
そこでやっとその重要性に気ずいた俺は、電話に駆け寄りダイヤルを回した。
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