14人が本棚に入れています
本棚に追加
日もくれ初め、武と別れた俺と美琴は家に向かい人通りが少ない公園を歩いていた。
「ねぇ、裕ちゃん。」
先日まで桜の咲き乱れていた道はその名残も見せず、緑色の葉を生い茂らせていた。
「裕ちゃんはもう将来の夢とかある?」
もうすぐ梅雨がくる、それが過ぎれば暑い夏がやってくる。
そうすればここも日陰を求めた人たちで溢れるのだろう。
「将来の夢……か。」
木々の間を抜ける風は心地よく、優しく俺と美琴の頬を撫でた。
「まだないな、ま~とりあえずここをでてもっと都心に行こうと思ってる。
そうすりゃ~何か見つかるかもしれねぇしな。
…でも何で急にそんなこと聞くんだ?」
撫でた風に乗ってどこからかいいかおり漂ってきた。
……これはすき焼きだな。
「私も今のところ全然決めてないからさ~、裕ちゃんに先おこされてたらいやだな~と思って。」
「なんだそりゃ。」
そんな陽気な日暮れの公園を俺たちは歩き家路についた。
最初のコメントを投稿しよう!