憧れ

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「はぁ…はぁ…なかなかやりますね」 「おい。そりゃこっちのセリフだぜ。お前。本当に一般人か?」 濃い霧の中に二人の男が立っている 辺りには青紫色の芝生と 美しい花が咲き乱れている 周りには石畳がぐるっと一週円を描いていて これで噴水でもあればどこかの大きな公園の中のようだが 男達の立っている周辺は草と花で埋まっている 言ってみれば草花以外には何もない 片方の男は胸を抑え 息も上がり上がりで苦しそうだ 背中まである長い黒髪に 白地の裾に紫の線が入った麻のローブを着ている 片やローブの男と対峙するもう一人の男は白髪の短髪で黒の化学繊維でできたスーツに黒のネクタイをしている ポケットに手を突っ込みながら苦々しい表情をしている 「私は…一般人だなんて…ハァ…一言も言ってはいませんよ…」 苦しそうな男は相手を嘲るかのような笑みを浮かべた 苦しそうではあるのだが 言葉の端々に何処と無く余裕を感じる話し方だった 「そうかい!黙ってそこを通してくんないかな!」 ローブの男の笑みが 癪に触ったのか スーツの男は声を荒げた 「…私の答えは…わかっているはずですよ…」 ローブの男はそう言うと手の甲と甲を交差させた 「なら!押し通る!」 スーツの男もそう叫ぶとポケットから手を出し拳を構えた
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