憧れ

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「ナガ!おいナガ!」 草原の上には麻で編み込んだ民族衣装を着た黒髪の青年が寝ている 辺りには爽やかな風が吹き抜け 近くの川からはせせらぎの音が聞こえる ぐっすり寝ている青年の脇腹に同じく編み込みのキャスケットを被った同じ位の年頃の青年が蹴りを入れている 「起きろよ!ナガ!時間になったら起こしに来いって言っただろ?」 ナガと呼ばれた青年はなかなか起きようとしない 呆れた青年は意を決したかのように呟いた 「しょうがない…南無三!」 青年は耐えかねて寝ているナガの溝落ちに革靴のかかとをえぐり込んだ 「ぶほぁ!!」 突然胃の中の空気を強制的に外に排出させられたナガはその場でもんどり打った。 「てんめぇ~!なにしやがんだ!」 ナガは起こしに来た青年の襟首を捕まえて締め上げた ナガの力はとても強く青年は抵抗することができない 「ぐるじぃ~!だっでよ~!おごじにごいっでいっだじゃだいが~!」 「はぁ?何いってんのかわかんねぇよ」 「どっ…どりあえず…ギブ…」 青年が失神しそうになるのを見てナガは手を緩めた。 「もっと爽やかな起こし方できねぇのかよウリューよぉ~」 「ヒィ…ヒィ…何度もチャレンぜ!まるで生まれたての卵を扱うようにな!」 どうやら相当絞られたようだ 「…行かなくていいのか?発表日なんだろ?今日」 「そうだった!アリガトよ!ウリュー!」 ナガは勢いよく走り出そうとしたがウリューが行く手を塞いだ 「待て、ナガ。お前何か忘れちゃあいないか?俺は依頼通り起こしたぞ」 「んだょ!後払いでいいだろ!?」 「いぃ~や!ダメだ!慰謝料でも欲しいぐらいだが心のひろ~いウリュー様だからと・く・べ・つに目覚まし代の100ヤンで許してやるよ」 ウリューは力強くナガの前に手を差し出した 「がめついなぁ。ほらよ」 ナガは麻の編み込みパンツのポケットからコインを一枚取り出して親指で弾いた 勢いよく飛んでくるコインをウリューはハエでも捕まえるかのように手のひらをスゥイングしながら受け取った 「まいど」 ウリューがそう言うか言わないかの間にはナガは走り去って行った
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