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車は崖から飛んだ。
そこに並ぶ木々をなぎ倒す激しい音をたてながら、僕達四人は車の中でぐちゃぐちゃになっていく。
フロントガラスを突き破る枝が、後部座席に座っていた僕の横を通り過ぎていく。
──その時、僕は見たんだ。
荒れていく車の中で、前の席に座っているお父さんとお母さんが、手を繋いでいる所を。
僕は必死になって、後ろから二人に手を伸ばした。
僕のこの手を、二人が握ってくれる事を信じて。
だけど。
だけど二人は、僕の手を握り返してくれる事はなかった。
この時僕は確信した。
ああ、僕は……
二人には愛されていなかったんだと。
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