転落

3/8
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
尖った窓ガラスが、激しく僕の体を傷付けていく。 痛い、痛いよ。 溢れる真っ赤な血を押さえながらもがいている僕の腕には、血がこびりついた腕時計がはめられている。 風圧で僕の座る隣のドアが開く音がした。 確認する間もなく、僕は勢い良く外に投げ出される。 忙しなく変わる景色に心うたれる事はなく、近付いてくる茶色の地面に目を奪われた。 一瞬。 ほんの一瞬だけ、僕の体を激しい痛みが駆け巡る。 体が全く動かない。 目を開ける気力もなく、僕の意識は段々と薄れていく。 地面の冷たさに近付いていく感覚を身に受けている時、僕の耳を膨大な音が通り抜けていった。 それは車が爆発する音だった。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!